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「触発」と「閃き」と「創造」について

平成25年、昭和なら昭和88年・米寿のめでたい年を向えました。

私はB型人間です。日記、ウォーキングなど長続きしたことがありません。

ブログ「平成・技士道」も中断したまま申し訳なく、ことしは「ショートコラムを数多く」をモットーに頑張ってみたいと思います。 どうぞご笑読ください。

「触発」と「閃き」と「創造」について

  「触発」とはものに触れて爆発・発動すること(広辞林)である。

ものが情報だとすれば、「触発」とは「情報をヒントにアイデアを発想するとか、やる気がでるとか何らか行動につながることであろう。 

現代人はいろいろなメディアを通じて情報に触れることは多いけれども触発には至らない。見過ごすか、聞き流すか。情報をしまい込むだけかで終わってしまう。

自分の担当する技術分野で「触発」がなかったなら、「些細な情報と判断したか」か、「本人が判断するに足る技術力を持っていなかった」か、「鈍かったか」である。仕事が順調だと、または猛烈に忙しく毎日追われる状態では、新しい情報を食いつく能力が落ちることもある

したがって「触発」される条件として「知的ハングリー」な状態が必須である。知的ハングリーとは、本人の技術力が高く、かつ、情報に敏感な状態といえる。

「閃き」は瞬間的な鋭い光、アイデアが瞬間的に頭に浮かぶことである。「閃き」はそのことを一生懸命考えている時に、難しい数学の問題が解けた時のように生じる。

一生懸命研究している時、関係ない分野の情報に触発され「ひらめく」ことがある。・・・「セレンディピティ」である。

 創造力を磨く方法はいろいろある。創造技法もその一つかもしれないが、仕事を一生懸命やり、壁にぶつかり、やってみて失敗し、また考える。職場では話し合う機会をつくり、わいわい、がやがややる昔ながらの環境、小さなアイデアでも褒めて大きく育てる環境など・・・

 私からはそんな知的ハングリーな環境で「触発」や「閃き」があり、それが創造につながるものと思う。

日本経済回復の兆しは見える。一人ひとりの技術者も冬眠から覚めたように「創造力」の世界を再興(再考、再構)いただきたい。

2012年3月25日 (日)

先端技術商品の衰退。何故?

本ブログを開設して2年になります。ブログを通じて、日本産業の技術力、それを支える技術者のあり方、ものづくりのあり方などを考察し発信してきました。

日本は産業力の低下、円高、東北大震災、原発事故、さらには稚拙な政治に揺さぶられ、正直元気がありません。日本の多くの技術者はいわゆるサラリーマンで、組織に属し、組織に言われるままにやることが美徳と考えているかもしれませんが、技術者には技術創造、技術革新などによって持続的成長と豊かな社会を実現していくことが強く求められていることを忘れてはなりません。要は組織を超えて考えることのできる人間となり、ドーンと行こうではありませんか。

◇何故?「先端技術商品の衰退」

 日本人は新しいモノ好きです。日本の先端技術商品をめぐって初期には世界市場で高いシェアを誇るものの、世界市場が立ち上がると、新興諸国の商品の台頭し、採算が取れなくなり、事業再編や、縮小を余儀なくされています。液晶パネル、DVDプレーヤー、リチウムイオン電池、カーナビなど代表的商品です。

 日本が年産3千万台の国内市場でガルバコス携帯と揶揄され開発競争しているうちに、世界の生産数量は16万台、ノキア、サムソン、LG65%、日本企業ではソニーエリクソンが2.3%とかろうじてトップ10内にあります。もはや国内では携帯の60%がスマートフォンに代わったが、ご存知のようにiPhoneが圧勝、AndroidではHTC(台湾)、サムソンが強く、日本企業は影が薄くなっています。 最近も、薄型TVでは世界の販売台数(全1.3億台)ではサムソン、LGで34%、日本勢は31%で1位の座を明け渡し、高機能型も3Dテレビやスマートテレビも韓国勢が上り調子、国内では価格の低下が止まらない状態が続き、もはや日本産業の止まらない凋落が心配です。

(注;先端技術商品の中でもデジカメはガルバコス状態ながら各社切磋琢磨し、8社で世界の80%近いシェアを維持しています)

 敗因は新興諸国の技術が高くなり(逆に技術の流失)、低賃金と重なって、新興国でも高品質の製品が世界中に出荷できるようになったこと。生産形態が垂直統合型から水平分散型に変わり、1社、1国ですべてを生産することが無くなったことです。アップル社のように、日本で調達している部品すらどこにありか分からないくらいになっています。私は「マーケッテング力」と「商品企画力」とこれらをサポートすることのできない、組織や風土に問題ありと感じています。

◇マーケッテングも商品企画も技術者の使命

 顧客にとって魅力ある商品であることが肝要で、必ずしも先端的技術が世界を凌駕するとは限らないのです。

日本の技術者はブランド企業に就職したがります。大部分の技術者は研究、開発、設計、製造と企業内の各組織に配属されます。少なくとも営業部門に好んで志望する人も少なく、どんなモノをつくるか(商品企画)の経験のないまま、510年ンと専門技術ばかりを磨くことを余儀なくされる人が多いようです。

戦後の日本も重厚長大型産業で成長し、開発力よりも生産力で成長してきたので、マーケッテング力、商品企画力に注目した技術者の育成は歴史的にも経験が浅いようです。技術者には「仕様をくれれば設計できる」という受け身型は多いが、顧客の要求への気配り出来る技術者は少ないと思われます。

商品開発プロジェクトでも、商品企画書自身が顧客の事情よりも、作り方や利益の事情を優先しがちになります。

アップルのスティーブジョブスは商品を自ら企画し、作り方もマーケットもすべてを把握したウルトラ技術者といえます。

日本の一般企業ではカリスマ的リーダーは育ち難いので、商品企画段階では、関係者相互にマーケット情報を熟知し、徹底した議論を繰り返し決定しなければなりません。商品企画が決定した以上は妥協が許されない。途中計画変更があると、開発が遅れ、利益機会を失うことになります。全員でサッカー試合に臨むべきです。

西堀栄三郎の「技士道15カ条」では「ひとに喜ばれるものづくり」という節があります。産業革命以来すべてのことがものづくり本位で、作る側本位で進んできたが、顧客の方を向いて顧客が本当に欲しいものをつくるのがもの作りの本質と述べています。

さらに、「技術とは組織をどのようにシステム化するか、経営や販売のノウハウ、現場の技能も含んでいる。すなわち人間の知的行動に価値を生ませるもの一切を技術といい、それに携わる人すべてを技術者といいたい」と書いています。

 

2011年11月28日 (月)

商品開発とイノベーション

ある大学の初年次教育の一環で、「商品開発とイノベーション」という講義をしました。

 我が国は「ものづくり立国」を目指して科学技術に力を入れ、その成果を誇ってきましたが、近年、中国、韓国など新興諸国の猛追を受け、先端技術商品のシェアが軒並みに下降し、円高、海外移転により日本の産業の空洞化もますます加速しつつあります。

 産業はモノを作り、流通することによって成り立ちます。 最近の日本の技術者は与えられたテーマ、与えられた組織の下では優秀な能力を発揮するが、テーマづくりや組織を超えて仕事をすることは苦手と言われています。自分の守備範囲をミスなくプレーできても、サッカーでは勝てないのです。新しい技術、新しいニーズから新しい商品を生み、流通、サービスするサイクルが、効率的に、かつ経済的に成り立つよう革新を図らなければ勝てないのです。技術者は自分の専門に拘らず、「商品」とは何か、「イノベーション」とは何か、それが自分の仕事(または技術)とどのように位置づけにあるかを常に考えて活動する必要があります。

そこで「商品開発こそイノベーションの原点」と考え、「モノづくりイノベーション体系図」なるものを考えました。

イノベーションを商品(Production)、生産・流通(Process)、技術(Technology)、市場(Market)の4つのエリアに分け、それらがコラボレーション(連携)して、うまく回転させることが、事業であり、産業であると考えます。

「モノづくりイノベーション体系 図」 

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◇商品(プロダクトイノベーション); iPadやスマートフォン、3Dテレビ、LED照明、電機自動車などヒット商品が誕生することによって、市場が形成、拡大することは言うまでもありません。商品イノベーションは新しい技術(部品や材料)や新しい製造技術によって実現できます。 長年、世界のトップシェアを維持している商品にデジカメがあります。画素数、倍率、手ブレ防止、自動露出、自動焦点、小電力化、動画、さらには顔認識、3Dなど各企業の切磋琢磨によって、市場を刺激し、つぎつぎイノベーションが起こっています。また、商品の仕様、価格、販売(市場への提供)などを計画することを「商品企画」 とよび、「商品企画書」によって、商品は開発され、工場は生産設備などを革新し、販売はセールスプロモーションや流通方法が決定します。 すなわち、商品企画から商品開発、市場投入、市場に刺激されて商品がさらに改良されるスパイラルをみると、「商品開発こそイノベーションの原点」といえます。また、商品企画は商品開発や事業化の関所と見ることができます。(マーケッテング;よい商品とは市場にとって魅力的である必要があります。市場と商品を調整することが「マーケッテング」です。ニーズを聞く「市場調査」とは違います) ◇生産・流通(プロセスイノベーション); 商品を生産するための設備開発や製造管理の革新によって商品のコストダウンや品質向上が可能となり、販売や流通のビジネスモデルを革新ことによって、欲しい商品が適正価格、かつ短納期で入手することが出来るようになりました。自動車、製鉄、半導体など日本を代表する産業は製造技術に関する「プロセスイノベーション」によって発展しました。しかし、出来たものを如何に速く、安く届けるか、販売・流通もプロセスイノベーションに含まれることは言うまでもありません。宅配便やツタヤ、Amazonなどの「ビジネスモデル」はプロセスイノベーションのさらなる革新事例といえます。

◇技術(テクノイノベーション) ;科学技術そのもの、部品、材料の研究開発など「シーズ」に相当します。大学や研究機関の研究開発、装置産業から見ればそれを支える部品産業で生まれるものです。 例えば、ICカードやICタグなど、いまでは小さなチップが無線化され、乗車券となり、お財布となり、高速道路や駐車場など自動で通過できるようになりました。 新しい技術が商品化され、社会を変えています。

◇市場(マーケットイノベーション);  大震災、原発事故によって、日本のエネルギー戦略の変更を余儀なくされています。自然エネルギーの利用促進、環境、安全を考えた、街作り、新交通システムなど「ニーズ」が新しい技術や商品を必要としていることは、今日ほどはっきり見えた時代はありません。医療福祉も高齢化社会の課題です。これまで、われわれはニーズに答えるものとして「商品」ばかり考えてきましたが、社会インフラ(道路、通信)や、サービスも考えたマーケットイノベーションを必要としています。

◇WhatとHow;  「何(What)」と「如何(How)」の関係は体系図ではプロダクトイノベーションとプロセスイノベーションの関係は産業構造のイノベーションにつながります。20世紀の日本の装置産業は商品の企画、開発から設計、製造、販売は1社で、または1企業グループで賄ういわゆる垂直産業構造でした。ところが、近年は販売は大型量販店で、製造は海外にアウトソーシング、LSI化やEMS化が進むと特徴ある技術をもった企業がコラボレーションする水平産業構造が当たり前となっています。これからの開発技術者は与えられた商品仕様を満足する製品を創るだけではなく、市場のニーズに応えるよう商品イノベーションを繰り返さなければならない。そのためにも今回提案した「モノづくりイノベーション体系図」をよく理解し、チームとして、あるいは関連する他の組織とのコラボレーション(共創)を図って欲しい。  自分の専門能力ばかりでなく、全体を鳥瞰し、統合する力を自ら磨いていただくことを期待します。

参考URL; (講義レジメ)は下記URLより http://homepage2.nifty.com/wiselabo/kanazawa2011.7.pdf

2011年9月24日 (土)

商品企画演習と創造性教育

大学でMOT教育が盛んになり、私もある大学の理系修士学生に「研究開発から事業化にいたる産業創成概論」を講義する機会を得ている。

「知るより出来る」人を育てるべきと、「自分で商品を企画し、商品の特徴や、それを誰に、いくらで売るか」というレポートをA4用紙1枚に宿題として書かせて添削している。専門バカと揶揄される研究者、技術者の卵たちに、総合的に俯瞰する目と、創造力とマーケッテングマインドの向上を期待している。

1.モノづくり立国の憂鬱

 日本産業は病んでいる。GDP、市場シェア、価格競争力、技術力、雇用、教育など失われた20年からなおも立ち直れないでいる。とくに高度経済成長時代をがむしゃら働いてきた団塊世代以前の人間から見ると憂鬱なことばかりである。

1)日本は世界の試作工場か・・・トップシェアを誇る先進的技術商品が、世界市場が大きくなると急速にシェアを落とす。(液晶TV、DVD、カーナビ、太陽光パネルなど)

2)新興工業国の価格競争力に押されて、国内産業が空洞化・・・近頃は電力事情による海外移転もでてきている。

3)開発競争がガルバコス島状態・・・狭い国内市場で先進性を競うばかり、世界市場は単機能、安価で高いシェアをもつ商品も(携帯、液晶TV、白物家電など)。個々の技術は強くも、商品力が弱いというべきだろう。

4)研究者志向、専門技術志向が強い・・・応用力、総合的俯瞰力をもった技術者が育っていない。細分化された組織の中で成果主義、リスク回避思想が浸透すると、企業も人も全体を統括したり、マーケット指向できる人材が少なくなっている。

5)大企業、終身雇用など安定指向が強く、起業指向人材が育たない・・・指示待ち人間とか草食系人間とか言われ、若い人のチャレンジ精神に陰りが見える。ベンチャ1000社計画という一時の勢いにも陰りが見える。

6)イノベーション、グローバル化の戸惑い・・・モノづくり立国を目指して、イノベーションやグローバル化が日常の会話で飛び交うようになった。

イノベーションでは材料や宇宙など科学技術面で顕著な成果がみられるが、任天堂のwiiAppleiPhoneなど魅力ある商品創造できる人材や企業は育っていない。物語つくりが弱いと指摘されている。

グローバル化により、ものは世界何処からも流通できるようになったが、人材、文化の交流が進んでいないことが中国や韓国などに猛追される原因になっているとみられる。

2.商品企画はモノづくりの原点

 私は長年企業で製品開発や商品企画、技術者育成に携ってきた。

開発した商品が「売れないのは高いからと営業が嘆き、売ってくれないから安くならないと工場が嘆く」、「売れるだろう・・・技術者の思い込みばかりが先走り」、「技術力なくても売れるブランド力」、「あれもこれもと機能が増えて高くなり」、「社内意見取り入れ過ぎて高くなり」、「私作る人、僕食べる人」など、多くの辛酸を嘗めてきた。者にとって、シーズとニーズを結ぶ商品企画がモノづくりの原点と痛感している。

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一般に大学研究者や企業研究者は基礎技術や専門技術の研究開発に携わっており、アイデアや研究が商品化されるプロセスや、ビジネスにつなげるための知識に疎い。

したがって、自分で創造し、マーケッテングできる能力を若い時代に体験させるべきと考え、MOT教育の中で、自ら発想したアイデアに基づいて商品企画書をつくる演習を受講生全員に試みた。

 さて、商品アイデアにはニーズ(マーケットの要求)ドリブンとシーズ(研究や発明から発想)ドリブンがある。商品アイデアを事業化するためには、まず「商品企画書」を作成し、商品の特徴、仕様を見えるように記載し、それを具現化するために必要な製品試作や生産計画、生産設備、販売計画などについて説明し、経営的裁定を仰がなければならない。すなわち、商品企画書は事業化への「関所」でもある。

3.A4用紙1ページで商品を語り、仮想商品カタログを創る

本講義の1週間前に下表の宿題を課し、A4用紙1ページにレポードを提出させる。

課題;

こんな商品が売れそうだ、こんなビジネスが事業になりそうだというアイデアを考え、

それがどんなものか、アイデアを発想した動機や背景、誰にまたはどんな人を対象と

し、どんな風にいくらで売るのかを考え、実現するための課題は何か

必須記載項目;

1)   商品名称 ・・・ネーミングだけでどんなものか想像できること

   

2)発想した背景・・・商品を考えた動機や背景

3)商品の説明・・・商品がどんなものか(機能)、特徴、主要仕様、価格

4)ターゲットユーザと販売目標数量

5)販売方法、サービス方法・・・想定するビジネスモデル

6)克服すべき課題・・・技術的問題、事業化における問題等、出来るだけ多く

4.グループ討議と同報メールでブラッシュアップし、仮想商品カタログへ

1回の授業で5人~7人にグループ分けし、順次自己紹介し、自分もレポートを発表する。グループは初対面、異学科のひとも多く、さながら就活の面接の要領で実施する。

課題に対する質疑、討議の時間は無いので、グループで構築した同報メールを使って、それぞれレポートに対する感想と、質問を行い、次週第2回で修正したレポートを再提出する。

第2回のグループ討議では改善した内容と説明し、主に克服すべき課題について質問を受ける。 課題発見能力が試される。

1週間後、最終レポートとし、「仮想商品カタログ」を付けてメールの添付ファイルとして提出させる。 幸いほぼ全員提出して納期遅れはない。

全レポートは1か月ほどかけ、11点講評するとともに、私が商品化として採択したいと優秀商品企画3点を表彰している。

本演習で気づいたことと注意したことを挙げると

1) 必ずgoogle検索し、類似品、類似技術を調査する。・・・同じものがあった場合、自分の企画の違いをはっきりさせる。

2) アイデアは現存技術で実現可能なこと、また、買手のターゲットが決まっていること(売れて商品、売れなくては屑)。

3) 克服すべき課題は自分がプロジェクトリーダーとなったつもりで、鳥瞰的に気づいたことを解決しなければならない事項を出来るだけ多く記載する。

4) グツール討議は異分野の学生で実施する。相互に質問は良いが、ケチをつけないこと。

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レポート事例・・・(仮想カタログ)

商品名称  ;「足下、あったカイロ」

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商品の説明; 提案する商品は「カイロ入りの靴の中敷」である。この商品で使われるカイロは圧電セラミックスを用いて作られている。圧電セラミックスとは圧力を加えることで電圧が発生する材料のことである。この材料を歩くときに最も体重がかかる靴のかかと部分に設置する。そして、セラミックス材料を踏むことで電気を発生させ、この電気を用いて負荷を発熱させる。充電などしなくても半永久的に使えることがメリットである。また、この商品の応用として同様の原理を用いた「スリッパ」も販売する予定である。 価格は5001000円程度を想定している。

5.創造性教育としての特徴

 商品企画書作成演習は「創造性教育」として次の特徴があり、一人ひとりが創造し、

課題を発見し、主体的に活動するという社会人基礎力の育成にも役立つことが期待

できる。

1)商品化プロセスの全体的理解と商品の質の向上

 商品は単なるアイデアではない。売れる商品とは何か、商品とするために生産から販売、さらには顧客に至るプロセスを具体的に鳥瞰できる。従って、商品としての質も向上できる。・・・商品競争力=品質(商品仕様)X価格X開発期間で決まる。Needs(あればよい)とWants(買いたい)は違う。

2)異業務、異技術を補うための創造活動

 商品を自分で、または企業として開発するとすれば、すべての技術に精通するわけではない。しかし、すべてを満足しないと商品にはならない。これを考えることで創造が生まれる。・・・商品は既存の部品や技術の組み合わせでは出来ない。不足部分に新たな研究開発が必要。

3)チーム力、コミュニケーション能力の認識

 企業の仕事はチームプレーであることを認識して欲しい。課題を発見し、それを正しくプレゼンテ―ションすることにより仲間の知恵を借りることが出来る。また、相手の課題を聞き出す力も必要。コミュニケーション能力と創造性は表裏一体だ。

商品企画、創造力、市場洞察力など、大学も企業もどのように教育しているかよく知らない。少なくとも座学でいくら能書きを垂れても始まらない。

是非とも多くの企業や、大学で、一人ひとり、一つひとつ、具体的な体験的指導をお願いしたい。                      (完)

本稿はNPO法人IAIジャパン(国際エンジェル協会日本支部)メルマガに寄稿したもの引用しました)

   http://archive.mag2.com/0000205484/20110815083000000.html

2010年12月15日 (水)

技術者への10訓

技術者への10訓

はじめに

近年、金沢大学MOT塾で「企業と技術者」という内容の講義をしています。その中で「技術者への10訓」という10項目の教訓を提示して、技術者としての心構えを話しています。

20年ほど前に京都のソフトベンチャからの寄稿でしたが、そのまま掲載します。

 

 技術屋は専門の如何を問わずしあわせな仕事をしている。何故なら同じ仕事は少ないので、絶えず想像力豊かに仕事ができる。仮に同じ仕事でも、前よりも半分のコストでできないかとか、半分の時問で完成するようチャレンジするので、たえず工夫がある。したがって毎日が勉強であり、仕事をしながら成長することができる。

筆者は技術屋稼業30年の大ベテランである。いや、技術革新が激しい昨今、ベテランなどという言葉は通じない時代であることはしかと認識している。しかし、年の甲だけあって、後輩へは人一倍大きな工一ルを送る自信(図太さ?)はある。編集者のお誘いにのって技術屋諸君に一言。スパイスにでもなってくれればしあわせ。

1.WHATHOW

技術屋はハードにしろソフトにしろ物作りに参画する。何事もそうだが、物作りにはWhat(何、目的、機能、仕様など)とHow(如何に、手段)がある。順序は「What」が先で「How」は後だ。

別の見方ではWhatは製品の品質(仕様、機能、性能)でHowは生産性(開発、設計、製造の能力)だ。製品仕様をきめて、開発し販売したが、もっと良い製が他社より出ていたり、あれこれ沢山の機能を盛り込みすぎてかえって価格アップや使いにくさを招くなど、商品企画やマーケティングについてはWhatの世界。

What(仕様)を.きめてから仕事をする。あたりまえのことだが、時々順序を誤ることがある。ソフト開発を進めていく上でも、What(要求走義)があいまいのまま、プログラムを進めて、変更のため最初からやり直したような経験は二度や三度はあるはずだ。

 技術屋はWhatを決めることに、客先打ち合わせや、DR(Design Reviw)を通じて、飽く無きエネルギーを集中しよう。

2.行間を埋めよ

Whatは必要条件だが、十分条件ではない。シーケンス制御システムの設計でも、メインシーケンスはよく検討されるが、異常処理については気配りの行き届かないこともしばしば発生する。

芝居のシナリオもストーリーはあるが、役者一人一人の表現まで記載されたものではない。私は我々の仕事を文章にたとえて「行間を埋めると言っている。行間を埋めるのは制作者(設計者)の仕事で、行間をよく書くことが技術力だ。行間の欠落や誤りで間題が発生しても、相手には費用を請求できない。貴重な勉強代と思って温かく処理すべきだろう。

3.1を聞いて10を知る

日本人は独創性がないのではと危惧されている。瓢箪から駒またはコロンプスの卵的な発想もあるが、我々凡人は小さな知恵の積み重ねの中から発想が得られる場合が多い。

そこで1を聞いて10を知ることを技術屋は常に心がけ研さんすべきだ。

御殿場から富士登山をしても、ほかにどんなコースがあるのか、なぜ御殿場コースを選んだのか。

技術屋の仕事も同じで、ある目的のためにはいろいろな手段がある。ぴとつの手段を選ぶとき、単に経験や先輩の指導だけでなく、他社はどうしているか、ほかの類似手段がないかなど、関連技術は豊宮に派生しており、池に落ちた石の波紋のごとく知識をひろげていただきたい。

4.高原より富士

技術屋なら誰しもトップの技術を持ちたいと思う。技術のレベルを山で例えるなら高原より富士山だ。

ところが、富士をつくるため、あれやこれやと勉強してもちっとも山は高くならない。

これぞと思う場所に上から砂を落とす。小さな富士ができる。もっと砂を撒いていくと、砂は崩れるが、裾を広げながらさらに高い富士ができる。技術屋の成長も富士の作り方に似ている。

一筆者の学生時代の恩師から戴いた教訓。いまも生き生き一

5.転んでもただでは起きぬ

お客からのタレームはいやなものである。しかし、工場の技術屋は自分の製品がどんな使われ方をしているのか、カスタマと接触できるチャンスである。技術屋には営業屋では嗅ぐことのできない触覚がある。クレームを手際よ〈処置すれば、技術力も評価され、お客と仲良くなり、製品改良のヒントやリピート受注にもつながる。

装置の故障が部品であると、部品の偶発不良として終わりとすることも多い。しかし本当に部品が悪かったのか、使い方に問題がなかったのか。類似事故が発生していないか。部品メーカの品質管理に問題がないかなど、その機会に徹底して調べることによって、改善があり、技術力の向上がある。

一転んでもただでは起きぬ事故の処理一

6.小さく転ぼう

技術屋には失敗はつきものだ。失敗を恐れては成長はない。

ところが、管理者は失敗を恐れる。そのため、若い技術屋に思い切って仕事を任ぜない。または、部分的に、小出しに仕事を与える。仕事が遅れると、つい仕事を吸い上げて管理者みずからプレーヤに戻る。管理者、またはリーダだけが忙しく、若手を遊ばせる?こともしはしば。

「このごろの若い者は」と年寄りくさい批判をする前に、多少の失敗に目をつぶるくらいのゆとりある育成を考えよう。

-技術屋は失敗を食って太るものなり一

7.できる人は起きる前に言う

バーナードショーの言葉に”Who can do.who can’t

sav”(できる人は実行し、できない人は説教する)と言うのがあるそうだ。なるほど、批評することはなんと簡単なことか。

これをもじって、”who can say before,who can‘t say after“(できる人はことが起きる前に注意し、できない人はおきてから文句を言う)というのはどうだろう。

転ぶ話とは逆行するが、我々会社人問も、一般社会も事件が起きると大騒ぎする。起きる前にどれだけの注意を、またはエネルギーを費やしたかは疑問な場合が多いのはどうしたことか。 ミスを避けるには、ウルトラ技は別として、最低限守らねばならない方法や、規則などは体で体得するくらいにきっちり教え込むこと。とくに安全や品質について言えることである。

8.使う人が本当の顧客

技術屋が自分達の作った製品について、本当に使ってくれる人からの声を聞くことができる仕組みになっているだろうか。

製品を選定したり買ってくれたりした人は、価格が安くて、カタログ仕様が良いとか、セールス力を評価したので、使い方がよくて、もう一度買いたいと思わせる製品をつくりたいものである。

ハードウェアでは設置条件や、保守、ソフトではヒューマンインタフニース(画面の設計や操作手順)など、工場では模擬できないことが多くある。また、使っている人も文章では表し難いことも多い。

謙虚に使っている人と対話する機会をもち、前述の行間を埋める製品を作りたいものである。

9.売れて商品、売れなければゴミ

会社には作る人と売る人がいる。そのコンビネーションが良くないと製品は売れない。

多くの製品はメーカで企画ざれ、開発ざれたものを発売する。開発するのは技術屋だが、売る人は営業である。

製品が売れないと技術屋は売れないことの理由を営業の責任にしたがり、営業は技術の責任にしたがる。

また、開発屋の中では、開発ばかりに意義を感じて、売れ行きに輿味をもたない人もいるようだが、技術屋は営業のために仕事をしているのではない。自分の製品が売れることに喜びを味わうべきだ。

技術屋のドキュメントでユーザに提供する情報の貧困ぶりは如何なものか。

売れないときや失注したときも本当の理由を知っておくべきだ。

10.商品=品質X価格X時間

開発が終わるころになって原価がアップしこれじゃ売れないということが良くある。製品の仕様や機能を目標価格は同時に満足すべきだ。

とかく開発は遅れがちである。見切り発車もしばしば起こりうる。

ソフトウェアでは形が見えにくいので、実は沢山のバグを抱えこんでいる場合も起こりる。

とくに、開発遅れによる機会損出は製品寿命の短い時代には計り知れない。

品質、価格、時間のトレードオフは開発プロジェクトリーダの責務だが、決まったことはどのアイテムも値切ることなく完墜すべし。

以上、取り留めもない愚痴に、ご意見賜れればこれまたしあわせ

      ・・・(株)ヴィッツ広報誌「XRAY NEWS」の投稿記事を再編・・・

. WhatHow

. 行間を埋めよ

3. 1を聞いて10を知る 

4. 高原より富士

5. 転んでもただでは起きぬ (失敗のすすめ)

6. 小さく転ぼう (失敗のすすめ)

7. 出来る人は起きる前に言う

8. 使う人が本当の顧客

9. 売れて商品、売れなければゴミ

10.商品=品質X価格X時間

2010年10月16日 (土)

元気な大学と技術者教育・・・神田雑学大学講演余話

生涯学習教育NPO「神田雑学大学」は毎週、いろいろな分野の通から話を聴き、その講演録をWEBで公開しています。    

http://www.kanda-zatsugaku.com/  

旅行、歴史、趣味、文学、健康など雑多なジャンルの面白い話を聴くことが出来ますが、雑学大学のジャンルとしては珍しく「大学と技術者」について講演する機会をいただき、このほど講演録が掲載されました。

http://www.kanda-zatsugaku.com/100820/0820.html 

ちかごろ金沢工業大学の就職率が良いことで注目されていますが、どんな教育をしているの?ということを、第三者の眼で話してほしいという趣旨で、大学の技術者教育等について、日本産業の動向、それを支えるぎ日本の技術力、技術者の基礎力について概説しました。

講演内容を要約しますと
.見えない技術者の仕事・・・科学者や医者は分かるけれど、技術者の仕事って分かっている人は少ないし、技術者自身も説明が難しい。
.大丈夫?日本の産業と技術・・・かってJapan as No1.と言われた栄光はどこに、
.技術者問題と望ましい技術者像・・・もう技術者のほとんどが団塊ジュニア以降の世代。草食系社員は何処へ行く
.元気な大学の「自ら考え行動する技術者」教育・・・求められる総合力は学力X人間力      .やる気を引き出す初年次教養教育・・・大学教育が専門に偏重したため、金沢工大の教養教育が注目されている。
.ものづくりの総合的実体験「プロジェクトデザイン教育」・・・専門に拘ると全体が見えない。プロジェクト教育や夢工房が総合的、実践的な技術者を育てる。

ガラバゴス現象、草食系については、すでに本ブログで述べました。 本稿では余話として「週間レポート」について補足したいと思います。

1年次必須課目に「技術者入門」という講座があり、ここでは「週間レポート」という、1件30文字程度にまとめた新聞のピックスを7件、さらに時事用語を1件100文字にまとめる宿題を課しています。 社会の出来事に関心をもち、新聞を毎日読む習慣をつける、文章を自分の言葉で正しく書き、かつ相手に分かる表現できることを狙っています。

1600人のレポートが毎週添削されますので、教育の効果がよく分かります。ある年から漢字の間違いが急増し、調べたところゆとり教育の影響だったそうです。

今年はNHKロボコンで優勝、エジプトのアジア大会では技術賞を獲得しましたが、テーマは毎年変わるので、毎年上位入賞は大変。下級生や異学科のチーム員への技術の継承。課題の製作は勿論、スケジュール管理や予算管理などすべて学生の自主活動です。 

神田雑学大学の受講者はほとんどが団塊の世代以上の方々で、貧困の時代を経験し、仕事を通じて国が豊かになることを実感しました。

技術者教育は就活のためでも特別な技術教育でもありません。 まずは一般企業人として自ら積極的に仕事に取り組む姿勢を養う教育と思います。これは楽して身に付くものではなく、学生時代から何事にも興味と執念をもって事に当たることに他ならず、それを仕向けるための環境作りが大学にも企業にも大切と思っています。

2010年9月30日 (木)

草食系を気遣う・・・「自助自立」で行こう

 今春報道された「新入社員意識調査というアンケート結果」によれば終身雇用、年功賃金という安定志向が50%近くと増加し、起業志向が13%に減少したとのこと。
海外で働きたい、または留学したいという若者も減り、米国への留学生数は1990年代の5万人から3万人に減少。国中が縮み志向の中に、草食系呼ばわりされるようになりました。
 温暖化で毎年枯れてゆく草原(日本)で、多少とも豊富な草地(企業)で一生過ごしたいというノー天気な若者の実態です。・・・もっとも、最近は草さえ生えない滅びゆく草原で生活を余儀なくされる若者も多くなり、社会的な対策とともに、個人の適応能力も問われています。                                                         

「企業の寿命30年」説はいまも健在ですし、われわれの周りを製品や技術を見渡しても日進月歩ですので、定年までの40年ほどを安心して勤めることは困難ですし、まして同じ技術をもち続けることは考えられません。会社人生2毛作と覚悟すべきでしょう。2毛作を認識するなら、技術者は自身がキャリアプランを考え、人生を通じて何をやるか、そのためにどんなことを準備すべきか考える必要があります。

最近、「人づくり危機「不安3世代」」(日経ビジネス2010.6.4号)という記事が出ました。
1)1986-1992年入社は身勝手な管理職「バブル入社世代」、プレイングマネージャーのまま頼りにならない上司。
2)1993-2005年入社は意欲低下した「就職氷河期世代」、3人に1人が仕事に絶望感をもち責任を負いたくない。
3)2008年以降入社は安定志向の草食系新人「ゆとり教育世代」、安定志向50%、叱られ経験のなし40%。

団塊の世代が去り、新人を育成する課長主任のほとんどが「バブル入社世代」、成果主義のプレシャに汲々とし、指示待ち型の新入社員の教育には辟易という光景が目に浮かびます。
新しい人材育成システムを確立しなければなりません。

望ましい技術者像というのは会社が求めるものと、新人が配属された組織が求めるものとは必ずしも一致しませんし、社会が望む技術者像も別にあるはずです。
なによりも技術者自身が自分のキャリアを考えて目標をもち、自分自身の技術者像を描くこと、それを堂々と周りに明らかにすることが必要です。

草食系若者への励ましに「自助自立」という言葉がぴったりです。

2010年8月12日 (木)

ガラバゴス化の悲劇(マーケッテングと商品企画の立場から)

 日本の携帯電話はカメラ、ワンンセグ、お財布携帯など多彩な機能で進化しながら、狭い市場で競争してきた。さながらガラバゴス諸島における生物の進化に似ている。

日本の生産量は全部合わせても5千万台、世界市場はもはや15億台、ノキア(38%)やモトローラ(14%)、サムソン(13)%などとは全日本で競っても足元にも及ばない。彼らは通話とせいぜいメールをつけて世界の市場を席巻している。

 そこにiPhoneやiPadというコンセプトの違う商品が登場、ガラバ島内では事業の撤退や統合に追い込まれている。しかもiPadでは日本で寄与している部品すら少ないと言われる。

 日本では全自動洗濯機も機能と省エネ効果で高価なものが売れ筋で、それを量販店で安値競争しているが、新興国市場のインドで圧倒的に売れているのは1万円程度の30年前に流行った2槽式。これを供給しているのは韓国のLGとサムスン。

 インドの自動車生産量は250万台、シェアの40%を占めるのはスズキだが、Tada社は価格は約2,000ドルの「ナノ」を販売、世界を驚かせた。仕様は最低機能にとどめ、サイドミラーは運転者側しかつけない徹底ぶり。国民所得が低く、道路に牛や象がいれば走れない、交通インフラが整備されていないため十分らしい。

 日本の技術者は製品開発では性能や機能の向上にこだわり、過剰性能、過剰機能を抑制することが少ない。マーケットを無視した商品の乱開発が今日も進んでいないか。ガラバゴス化はマーケットを無視してた商品開発で発生しているのではないか。

 商品の開発にあたって、商品の機能や仕様、価格、ビジネスモデルなどを企画する仕事は商品企画とよばれる。

筆者も昔、主要事業の商品企画を経験したが、A社はこんな機能、B社はあんな機能と、機能競争したり、特別なユーザのニーズを取り込むなどで、するので、どんどん機能が膨らみ、製品仕様と製品価格のトレードオフに苦戦しながら開発を進めることがしばしばあった。

「社内意見取り入れ過ぎてヒットせず」という川柳まで流行った時代もあった。

 「スカイラインの桜井眞一郎」。「Appleのステーブ・ジョブス」など、代表的商品企画マンだ。

商品企画だけでは商品は出来ない。強力な開発部隊、生産部隊など各企業とも総力を結集する。

商品開発は技術者の生甲斐だ。ガラバゴスが悲劇でなく、ガラバゴスから世界を制覇できる商品が誕生することを期待する。

2010年7月29日 (木)

「創造環境」を考える

日本の産業のIMF国際競争力は1990年1位のランキングから年々落ち込み2008年には22位になっている。

数年前まで独占的なシェアを誇っていた液晶テレビ、DVD、カーナビなど先端技術商品のシェアもはや10~20%に落ち込んでいる。

これらシェアの落ち込みは、労賃の安いアジア企業にやられたとの見方もあるが、iPadのような話題の商品も、商品コンセプトや商品仕様さえあれば、アジア諸国でも開発、製造が可能となった。電気自動車、も新幹線までもがキャッチアップされ、日本産業の優位性を誇る場が少なくなっている。

技術者の仕事の本道は「創造」だ。「創造」はなにも発明し特許をとることばかりではない。製品開発には既存の特許を調べて回避手段を考えること、ニーズ、シーズから商品そのものを創造すること。さらには生産プロセスや品質プロセスの改良も創造に属する。

製造現場や顧客で発生した不具合から改良手段を考えたり、商品販売のためのPRや、顧客に最適なシステムを提案する販売技術にも創造の場がある。すなわち、創造は技術者の行為そのものと言える。

「創造」には個人の知識、経験、創造能力に課題が結びついて表現されるが、創造活動を支えるために技術情報や市場情報を収集し、何時でも知恵として取り出せる能力の研鑽、さらには職場環境や企業の経営姿勢などが影響する。

そこで、創造活動に影響する要因を「創造環境」と呼び、それら要因をつぎのように整理できる。

1)技術情報;文献、学会、展博、Webなどの情報。競合製品の解析、比較

2)市場情報;ニーズ、マーケッテング情報、納入現場の不具合やサービス情報、顧客の取り扱い情報

3)職場環境;同僚、上司とのコミュニケーション(特にワイガヤというインフォーマルなコミュニケーション)、プロジェクト参加、小集団活動、異分野の人たち、顧客との折衝。

4)経営的環境;組織、人事評価制度、人材育成、技術情報管理、知財管理

筆者のような高度経済成長期を自由闊達にやってきた者から見ると、日本企業の「創造活動に対して、イエローカードを提示したくなることがよくある。

*組織が専門化、細分化されると組織間に起こる問題に気がつかなかったり、対処しなかったりすることが出てくる。野球でいえば三遊間にボールが来ると、難しい球はどちらも取りに行かないケースが起こりうる。

*草食系の若手技術者を丁寧に指導せず、自分の仕事に汲々とする。指導する上司もバブル時代育ちで指導できるほどの技術を持たない。

*ITばやりで、1対1、またはグループ討議などする機会もなく、上司から割り当てられた業務を消化するのみ。

*自分でキャリアを積んでいく姿勢に欠ける。

*「創造力」が弱いと個人も企業も思っているのに、改善するすべなく、看過している。

「創造」は時間、場所、相手、質を選ばない。普段の個人と企業のモチベーションだ。

例えばアイデアマラソンや情報をメモする習慣づけ、特許出願、改善提案、安全委員会のヒヤリハットシートなど、大変だがそれが技術者の本業だ。元気を出して頑張ってほしい。

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2010年6月28日 (月)

サッカーに学べ

 FIFAワールドカップも始まりサッカー熱が世界中をヒートアップしている。
サッカーチームと日本企業、サッカー選手と日本技術者を対比すると日本の弱さが目立つ。「ものづくり立国」「強い技術力」の再生をサッカーに学びたい。

「強いチームワークとは」
 日本人は「30人31脚」のようにそろってやるスポーツ、野球のようにポジションが決まってやるスポーツに強いが、サッカーやラグビーのように一人ひとりが判断し、コミュニケーションをとりながら行動するチームワークを必用とするスポーツには弱いといわれている。 サッカーチームにみる基礎技術力、素早い行動力、チームワーク力を見るにつけ、製品の開発・設計を担う企業と技術者には見習うところが多い。サッカー的視点からは日本企業、日本技術者の力を評価すると・・・
◇スピードの不足
 日本企業チームはボールをキープし、パスし、ゴールに持っていくスピードが足りない。製品開発のスピードが遅い。とくに、先端技術を市場に出すまでの力が弱くなった。これまでのチームは右上がり環境に支えられ、製造技術を中心に成長してきたが、新しいボール(技術)が投げられたとき(商品化や市場環境の変化)の、判断(マーケテング)や攻撃力(開発力)が弱い。
◇アイコンタクトが下手
 サッカーではボール運びは監督の指令によらない。選手同士のアイコンタクトによる。これまでの縦社会型組織では、決まった手順でボールをパスすることはうまいが、組織を越えて行動することが下手。実戦になると、アイコンタクトができない。守備範囲が狭く、合議がなければ物事が進まないチームでは試合にならない。
◇スターのいない名門チーム、トレードの少ないリーグ
 ブランド力の強いチームで、試合運び(経営力)のうまいチームでも、スター選手(社外で通用する技術者)が育っていない。井の中の蛙的選手でもやってこられたということか。
 選手は定年までチームに在籍し、ファミリーをつくってきたので、トレードによって選手を強化することができない。FA制度もままならない。選手もそんなチームの風土に安住して、自分の研鑚と自己PRを疎かにしてきた。
就活では、小さくても自分を生かす企業より、安定企業や大企業への志向はなおも強い。

「がんばれ日本の技術者」
 世界産業のワールドカップでは中国という強烈なライバルが登場した。日本チームはバブル崩壊以後の20年間はGDPも伸びず、国際競争力も年々低下している。 サッカー的には試合はこび(企業経営)もぎこちなく、稚拙な成果主義のため選手のやる気も失せている。まず選手一人ひとりが強くならなければならない。 「がんばれ日本の技術者」とエールを贈りたい。
◆実戦で鍛える
選手はキックやパスなど技術は勿論のこと、実践での行動も研ぎ澄まされたものでなければならない。いつ、どこからボールが飛んでこようと、どこへ走り、どこへパスするか。失敗を恐れて逃げることはできない。ボールを持ち過ぎてもいけない。
技術者の仕事も勉強だけ、知識だけでは役立たない。実践の場で臨機応変に上司、同僚、ときには顧客とコミュニケーションしながら、機敏に行動しなければならない。
◆フットワーク
 守備範囲があらかじめ決められた縦組織の中で育ってきたので、自ら組織を越えて行動できる選手が少ない。技術の陳腐化は速いので、新技術を貪欲に追っかけてほしい。これによってフットワークができる。フットワークがないと選手生命は尽きる。 次々登場する新技術、新用語の理解がフットワークのバロメータだ。 新しいこと、難しいことに出遭うと後にせず、すぐ調べ、すぐ行動しよう。
◆ヒューマンネットワーク
 シリコンバレーの活力はインフォーマルミーテングと聞く。組織を越えて、専門を越えてヒューマンネットワークをもち、人的交流を深めるべきだ。異業種交流もよい。趣味の仲間に加わるも良い。
交流は「ギブ・アンド・テーク」にはじまる。基本はキャッチボールだ。人に頼まれたことに「ノー」と言わないことだ。
◆現場主義
 大学で講義してわかったことだが、オームの法則の問題で「5V割る1kΩは5A」と単位を間違えても平気な学生が少なくない。とんでもない答えを書いても平気な学生が何と多いことか。 実体験がないのだ。
「ものづくり」が大切と言われながらも、自分の設計した製品を自分で試験し、操作した経験のない技術者もなんと多いことか。「考えられない」というトラブルが後を絶たない。マニュアル人間はいらない。バーチャル人間もいらない。チームの全員が現場主義に徹して手を汚そう。買う人、使う人の目線で仕事をしよう。

2010年6月 6日 (日)

起業志向を伸ばそう

新入社員の意識調査の結果が毎年4月に日本能率協会と日本生産性本部から出る。
JMAによれば定年まで勤めたいとの意向が年々上昇傾向にあり、長期雇用型は50%を超えた。

年功主義志向も高まり2006年に比し16P増加しやはり50%を超えた。いわば安定志向が強まっている(資料1)。

日本生産性本部によれば一生今の会社に努めたいが57%、社内で出世するより自分で起業し独立したいも毎年低下し、2003年32%より19P低下し13%と驚くほど起業志向が失せている。(資料2)

一方、経産省レポートによれば、企業の総数も1980年代(比1次産業では開業率と廃業率が逆転し、廃業率は開業率5%より1ポイント上回って推移している。6%代に80年代企業総数530万社は2006年は420万社と減少している。(資料3)

会社の寿命は30年、製品の寿命は10年は維持できない。例えば、20年間ではデスプレイは液晶、プラズマ、有機ELと変わり、半導体はDRAMからSRAMにLSIはSOC、FPGAなど製造プロセスも設計法の変化も目覚ましい。ケータイの変化、自動車の電子化、情報家電などなど、10年一筋の製品や技術なんて見つけるのが難しいはずだ。
技術者はいつまで技術に追従出来るだろうか。

技術者が40年間同じ技術を深耕し続けられるかと考えると、深く、広く、またはジャンプしても自分の守備範囲、または攻める対象を広げなければならないことは言うまでもない。

企業も個人もキャリアプランを持つことが、一層要求されているはずである。
起業もキャリアの展開先として当然念頭に置かなければならない筈なのに、日本中その意欲を減退させているといわざるを得ない。

企業も個人も安定志向の人が増えて会社に頼ろうとする。会社自身にも事業を継続発展させる風土が醸成されていなければ、リストラを余儀なくされる。

企業の組織を見ると多くの企業ではXX設計課とか、XX技術部とか専門技術で分けられたその組織のミッションを優先するため、教育はおろそかになる。

1970年代、1980年代は日本経済も各企業の規模も拡大してしてきたので、技術者はそんな心何でもやらされ自然と力をつけることが出来た。

ある製品が大きくなると、販売、設計・開発、生産、サービスと組織が出来、時には分社化されると、新入社員がどこか組織に配属されると他の技術を習得する機会が失われ、ローテーションもままならない。10年も同じ組織にいればベテランにはなるが、周辺の技術に疎くなり製品ごと、人も沈没する。

したがって、安定志向の新入社員の希望を容認するなら、企業も技術者自体も起業マインドを養うことが必要と思う。

資料1)日本能率協会 http://www.jma.or.jp/news/release_detail.html?id=91
資料2)日本生産性本部 http://activity.jpc-net.jp/detail/mdd/activity000979.html
資料3)経産省http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100225a06j.pdf

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